4 薩摩琵琶の系統


歌と演奏法の観点から薩摩琵琶は士風琵琶と町風琵琶の2つの流れに分類される。
士風琵琶の特徴として質実剛健を旨とした武士的な性格を持つ点があげられる。
また、町風琵琶の場合は都会的で艶麗優雅を重んじる特色を持つ。
旧来の琵琶は士風であったが、18世紀江戸時代中期になり浪人した武士が町中で
演奏
するようになるに従い技法が華やかになる。
そういった琵琶は町風琵琶と呼称され、士風琵琶と区別された。

5 薩摩琵琶の変移


江戸時代末期、士籍を脱した名人池田甚兵衛により士風・町風の両方の長所を複合させた
今日の薩摩琵琶が創出され、明治時代になると上京した薩摩(現鹿児島県)の琵琶奏者達に
よって薩摩琵琶は日本全国に流布した。
大正時代に永田錦心が新しい一派である錦心流を開いて以来、錦心流以外の本来の薩摩琵琶は
「正派」と呼ばれるようになった。

両者は歌い方と弾法において多少相違している。
昭和時代に入り錦心流から出た水藤錦穣により筑前琵琶や三味線の手法を取り入れた錦琵琶や、
第二次世界大戦後になってからは鶴田錦史によって鶴派と呼ばれる現代的な琵琶が創出された。

これら2種の琵琶は正派や錦心流の琵琶とは楽器の構造を異にしている。

6 弾法における精神性


本来の薩摩琵琶は士風琵琶と町風琵琶そのいずれも武士によるものであり、近代までは一般の
町人・農民階級には琵琶の弾奏は禁止されていた。

弾奏中、敵に斬り込まれた場合直ちに撥を手裏剣の代わりに相手の眉間に討ち込みその間に
脇差をとって応ずる為に、撥を右肩から打ち込む事を薩摩琵琶では
武士の気風の心得としている。
また、打ち撥や切り撥といった撥の名称は、薩摩琵琶における精神性の真髄が表れている好例で
あるといえる。